わんころけっとのアメリカに暮らしてみたものの

海外で暮らし、劇場で働き、社会で学び、子育てして、ゴルフする

あっ...性的指向や 外見に基づく偏見を 職場に持ち込むことはセクハラですよ...

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今回もアメリカの職場で行われるセクハラ講習から事例を紹介します。

今回も、頭で分かっていることと、感情で思うことにズレが生じたりするかもしれませんね。

「いや、そうなのかもしれないけど・・・」

「いや、仕事にあった服装ってあるでしょ」

といった感想を持つかもしれませんね。確かにアメリカの職場にもドレスコード(服装規定)はあります。例えば、

  • ジーンズ(特にブルージーンズ)の禁止
  • T-シャツ(襟無しシャツ)の禁止
  • 男性のショーツ(半ズボン)の禁止
  • 男性のジャケット着用義務

などがある職場もあります。ブルージーンズは、アメリカでは作業着という認識が定着していますので、オフィスでの着用を禁止している企業は多いです。オシャレかどうかは問題ではありません。ブランドものの高級ブルージーンズであったとしても、ブルージーンズはブルージーンズとして判断されます。かつては男性はスラックスにネクタイが規定されている企業が多かったですが、ポロシャツにチノパンをOKする企業も増えました。しかしショーツ(半ズボン)は女性には認められていることが多いのですが、男性は不可というところが多いです。これなどは、個人的には性差別ではないかと思うのですが、みなさんはどう思いますか?

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スカートについても同じです。オフィスにおいて「男性がスカートをはいてはいけない」とすれば、それは「女性はズボンをはいてはいけない」と言っているのと同じに思えるのですが・・・。ちなみにアメリカは、日本の人が思っているよりも保守的な側面を持っています。裁判所などでは、女性のパンツルックは歓迎されない傾向がある、とも言われています。数年前にユナイテッド航空が「レギンス」をはいた少女たちが、レギンスが理由で搭乗拒否にあったことがあります。この時、ユナイテッド航空は大きな批判にさらされましたので、覚えている方も多いのではないでしょうか。

www.newsweekjapan.jp

 

人事専門家でも弁護士でもない私は事例を紹介することしかできませんが、セクハラを考える、あるいは”職場の常識”を疑ってみる、ちょっとした手がかりとなれば幸いです。友達と以下の事例について、どう感じるか意見を交換してみると、その人の価値観が分かったりして面白いかもしれません。

ケース・スタディー:外見と性的指向への偏見

ケース:太郎さんは図書館で、分類法に従って書籍を整理したり、書棚を管理するポジションで働いています。太郎さんはジュエリーに興味があり、イヤリングやネックレスなどの装飾品を毎日身に着けています。太郎さんの上司である花子さんは、図書館に務める男性がジュエリーを身に着け、図書館司書になりたいと考えるのは奇妙だと考えています。花子さんは、しばしば太郎さんの外見について、冗談めかして皮肉を言ったりします。

いずれ図書館司書として働くことができる図書館情報学の学位を取得したいと考えている太郎さんは、利用者の資料請求などを補助するアシスタント職のポジションが募集されているのを知り応募します。花子さんは、太郎さんが本当にそのポジションに就きたいなら、”もっと普通”に見える服装にするか、利用者などから見られることのない、カタログ製作のポジションがあくのを待って応募したほうが良いと言います。

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質問1:個人的嗜好を理由に不適格とすることは適正か?

質問1:太郎さんの上司である花子さんが、ジュエリーが趣味で着用している太郎さんは、利用者と対話するポジションには不適格である、と太郎さんに伝えることは正しい言動であった、と言えるか?

回答:いいえ、正しくありません問題は、花子さんが、男性がジュエリーなどの装飾品をつけるのは”普通”でない、との偏見を持っていることです。花子さんのコメントは、性別に関するステレオタイプを含んでいると言えます。

質問2:個人の性的指向を探ったり、噂話のネタにしたりすることはハラスメントになり得るか?

ケース(継続):花子さんは、太郎さんが同性愛者(ゲイ)ではないかと疑っています。花子さんは「ゲイであっても気にしない」と言っていますが、太郎さんがそのことを「秘密」にしていると考えています。花子さんは、太郎さんに「結婚していますか?」「パートナーはいますか?」「子供はいますか?」など、太郎さんの私生活についての質問をし始めます。太郎さんは、すべての質問に「いいえ」で丁寧に対応しようとしますが、花子さんの「探るような」質問にうんざりしています。そして花子さんは、太郎さんの性的指向について、太郎さんの同僚たちと噂話を始めます。

質問2:太郎さんは、花子さんによって性および性的指向に基づくハラスメントを受けている、と言えるか?
回答:言えます。花子さんは性的指向に関して偏見を持っていますが、その偏見に基づく価値観に太郎さんが従わないことを理由に、花子さんから嫌がらせを受けています。

同時に、ゲイという性的指向への考え方についても嫌がらせを受けていると言えます。性的指向への嫌がらせを指摘するとき、太郎さん本人が同性愛者であるかどうかは関係ありません。
太郎さんはまた、性差別や障害差別を禁止する人権法で示されているように、性同一性によってもハラスメントを受けている可能性があると言えます。

太郎さんは、花子さんの言動を上司や人事部に報告する必要があります。花子さん言動は明らかにセクハラを禁止する就業規則に違反しています。

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質問3:性別や性的指向を人事の根拠とすることは妥当か?

ケース(継続):太郎さんは、このような状況下では、昇進や移動に関して、公平な扱いを受けられないと判断し、花子さんの言動への不満を花子さんの上司と人事部に報告します。人事部では調査を実施し、「太郎さんがジュエリーを身に着けていることは就業規則に違反しないこと」「太郎さんの処遇について、太郎さんの性的指向を考慮に入れてはいけないこと」「太郎さんへの嫌がらせと取れる言動を止めること」「太郎さんの私生活を尋ねる質問を止めること」「太郎さんの私生活について噂話をするのを止めること」などを伝えます。

花子さんは、太郎さんの私生活への質問や噂話を止めますが、その後、太郎さんが就きたかったポジションに女性スタッフを採用します。この女性は、太郎さんよりも実務経験がはるかに少なく、学歴も太郎さんよりも低いものでした。

質問3:太郎さんは、性別、性的指向、あるいは報復に基づく差別の被害者である可能性が高い、と言えるか?

回答:言えます。花子さんが太郎さんを、そのポジションに推挙しなかった理由は定かではありませんが、状況は花子さんにとって良くないと言えます。花子さんは、太郎さんに対してハラスメント行為を行った性的指向に基づく偏見を今も持っているか、太郎さんが人事部へ報告したことへの報復行為を行っているか、あるいはその両方と考えられます。太郎さんは、さらに人事や上司と話し合い、花子さんが太郎さん以外のスタッフを同ポジションに選んだ状況について調査する必要があります。もし花子さんが太郎さんの採用を公正に検討していなかったり、人事権を乱用していたことが判明した場合、花子さんは懲戒処分の対象となります。今回のケースは、さらなる差別を予防するために、ハラスメントの申立があった場合には、場合によってはより厳しい対応を組織は取る必要があることを示しています。

今回のケース、ある部分、男女を置き換えて考えると日本でも良くある事例だったりしませんでしょうか。上司の個人的な偏見から人事で不利益を被る、あるいは報復を受ける・・・。服装については、たしかにその職場やポジションにふさわしいかどうかは考慮に入るのではないかと思いますが、あくまで職能として議論すべきであって個人的な好みや偏見で、恣意的に不当な扱いを行うのは問題ですね。うーん、勉強になります!肝に銘じます!

 

注)同ブログの著者は人事専門家でも専門分野の弁護士でもありません。上述したケースは、あくまで素材として広く出回ってる事例をもとに記述しています。個々のセクハラ行為や迷惑行為に関しましては、直接、個々の責任において、専門の弁護士にご相談ください。