わんころけっとのアメリカに暮らしてみたものの

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セクハラに男女は関係ない。女性が男性の身体に触れることもセクハラ問題になりうる。

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前回に引き続き、アメリカにおけるセクハラ・ケース・スタディーです。

今回は女性から男性へのセクハラです。身体に触る。密接させる。

ケース1:太郎さんが準備したプレゼンテーション用の資料について、新任のスーパーバイザーである梅子さんと内容を確認していたとき、梅子さんがかなり身体を太郎さんに寄せてきていることに、太郎さんは気づいていました。ミーティングの時などに、梅子さんは、ちょくちょく太郎さんの手や肩に触れることがあり、太郎さんはその都度、梅子さんから身体を離すようにしますが、梅子さんは、太郎さんの言外のメッセージを受け取っていない様子でした。

質問1:梅子さんのこうした振る舞いは、「行き過ぎ」あるいは「深刻」と言えるほどの行為ではないと考え、太郎さんは無視するべきでしょうか?

回答:いいえ、無視する必要はありません。太郎さんが梅子さんのこうした行動を不快に感じる場合、太郎さんにはいくつかの選択肢があります。

もし太郎さんが梅子さんに、「梅子さんが身体を寄せてくることや、触れてくることを不快に思っているので止めて欲しい」と直接、話すことができるのであれば、そのように話すべきです。

もし直接梅子さんに話すのが難しいようなら、梅子さんの上司に話すこともできます。梅子さんの行為は、(梅子さんに注意を促したあとも、梅子さんが太郎さんに振れる、あるいは身体を寄せるなど行為を止めてくれない場合を除いて)違法なセクハラと認定するほど深刻で執拗ではないかもしれませんが、太郎さんが職場で不快な思いを我慢する必要はありません。逆に梅子さんには、そのような振る舞いを正当化できる理由がありません。

軽い接触のつもりでも、相手が不快感を表明した場合は、即刻、止めるべし。

ケース2:太郎さんが不満を伝える前に、コピールームで梅子さんが太郎さんの「背中をなぜる」ような行為をしました。太郎さんの不満は限界に達していましたが、不満を本人に直接伝える、あるいは上司に報告する、といった行動にはでていませんでした。

その後、太郎さんは、梅子さんのオフィスで仕事の打ち合わせをしましたが、打ち合わせが終わった時、梅子さんが、太郎さんとドアの間に立ったため、部屋の外に出ようとしていた太郎さんの前に立ちふさがり、部屋に閉じ込められるような立ち位置になりました。どうして良いか分からなかった太郎さんは、梅子さんの横をすり抜けて外に出ようとしました。その際に、梅子さんは手を伸ばし、太郎さんのお腹のあたりを触り「いい感触ね」と言いました。

質問2:コピールームで梅子さんが太郎さんの背中をなぜた行為は、単に不注意、あるいは偶然の可能性があるので、この出来事を理由に、太郎さんが梅子さんに不満を伝えることができなくても、仕方ないと言えるでしょうか?

回答:いいえ。梅子さんの行動はエスカレートしつるあると言えます。梅子さんの「近すぎる」あるいは「身体に触れる」といった行動のパターンを考えると、コピールームでの「背中をなぜる」という行為が偶然や不注意だったとは考えられません。コピールームでの接触が、太郎さんが梅子さんのオフィスに「閉じ込められそうになった」ケース以前に起こった出来事であったとしても、太郎さんが経験した梅子さんによる不快な行動すべてを報告すべきです。

性的なコメント付きの接触は、なおのこと問題となる

質問3:梅子さんが太郎さんのお腹に触れて「いい感触ね」と発言したことは不適切ですが、1度だけのことですから、違法なセクハラ行為とまでは言えないのではないでしょうか?

回答:性的な意味合いを持って他人に「触れる」という行為は非常に深刻な行為であり、回数の問題ではありません。特に不適切なコメントを伴って不適切な行為が行われた場合はなおさらです。太郎さんは、梅子さんによる不適切な行為が積み重ねられるのを待つ必要はなく、すぐに人事、あるいは上司に報告する必要があります。梅子さんは、解雇も含んだ正式な懲戒処分を受けることになるでしょう。

うーん、またしても厳しいエンディングとなりました。コロナ禍の現在だと、さらに別の意味で問題になりそうな事案ですね。

セクハラに男女は関係ない。セクハラへの対応も男女同権である。

これは、女性の上司が男性の部下の「身体に触る」「身体を密着させる」「性的なコメントをする」とのケースですが、基本的に、セクハラ行為に男女は関係ありませんから、女性から男性へのセクハラ・ケースであったとしても、男性から女性へのセクハラと同様に対処されなくてはなりません。男性だから問題ない、男性だから我慢すべき、との理屈は通用しません。しかし、上述したケース、男女を入れ替えると、なんだか良く聞く話な気もしますね、

セクハラ・ケースは基本、人事で対応するがアメリカ流

私がワークショップに参加した時のケースですが、

ケース4:同じ職場で働く男女従業員がエレベーターに乗り合わせた際に、男性が女性に対して「やっと二人っきりになれたね」と冗談とも本気ともとれる言葉を投げかけました。不愉快に思った女性はその場で男性に抗議しました。男性も女性に対して謝罪しました。その後、女性は、この出来事を人事に報告します。男性は人事から事情聴取を受け、今後このような言動は行わないと誓約させられ、その上で女性に謝罪しました。

質問:この女性の(謝罪を受けながら人事に報告する)行為は正しい判断だったでしょうか。

著者:私は、前回のケース同様、謝罪しているのだから、しかも1度だけのことなのだから、人事に報告するのはキツイ、どうしても納得できないなら、上司に報告し対処してもらうで十分ではないか、と発言しましたが、弁護士からの回答は以下の通りでした。

弁護士:いいえ、セクハラ事案は、すべて人事に報告すべきです。セクハラ事案は、チーム内で解決、あるは上司が間に入って解決しようとするのではなく、人事に一任すべきです。人事は専門の弁護士らと相談のうえ対応を決めるべき。

とのことでした。「ほんの冗談で」は、もう通用しないと心すべきですね!

koryunosusume.com

注)同ブログの著者は人事専門家でも専門分野の弁護士でもありません。上述したケースは、あくまで素材として広く出回ってる事例をもとに記述しています。個々のセクハラ行為や迷惑行為に関しましては、直接、個々の責任において、専門の弁護士にご相談ください。