ニューヨークの劇場をどう探すか。
ニューヨークの劇場をひとまとめに紹介するサイトやサービスはありません。ですので、ニューヨークで劇場を探すときは、通常、過去にレンタルしたことがある、別の公演を見に行ったことがある以外は、知人から情報を得る、などして探し始めます。もちろん、Googleで検索して探すことも可能です。ただ、劇場によっては、表の情報に表れない使い勝手や制約などがあったりしますので、できれば、その劇場で働いたことや、作品を上演したことがある人から事情を聞くのが良いでしょう。また多くの劇場ではレンタル料金や付帯設備費などをウェブ上では公表していません。
ニューヨークの劇場レンタル料の相場
演劇向け小劇場のレンタル料金の目安:
100人以下の劇場:$2,500〜$10,000(1週間)
200人以下の劇場:$7,000〜$15,000(1週間)
劇場費に幅があるのは、ニューヨークの場合、99席以下の小劇場はビルの1室からオフ・ブロードウェイ用まで幅があるので、料金もかなり幅があります。
ニューヨークでは、劇場レンタルは1週間単位(月曜から日曜)が一般的です。もちろん週末の数日間、あるいは平日の1日という借り方が可能な劇場もありますが、1週間単位のレンタルが優先されることが多いのは、ニューヨークでは小劇場の場合でも上演期間が2〜3週間ということが多いからでしょう。これとは逆にコンサートホールなどでは、1日ごとのレンタルが一般的です。*1オフ・ブロードウェイ向けの劇場(499席以下)の場合、数ヶ月からオープンエンド*2でないとレンタルが難しい場合も多いです。ロングラン作品の間にたまたま空きがあってレンタルが可能になることもありますが、ロングラン作品のスケジュールが変更になると、たとえレンタル契約があってもスケジュール変更が求められたり、ロングラン公演のスケジュールが明確になるまで確定してもらえない、といったことも多々あります。あと劇場にレジデンス・カンパニーがある場合や、自主事業を行っている劇場の場合は、劇場の主催事業のスケジュールが優先されます。
劇場レンタル担当者に連絡する
気になる劇場が見つかったら、劇場のレンタル担当者に連絡し、日程や料金を確認します。使ったことのない劇場であれば、下見のアポを取ります。レンタル条件に問題がないとなれば、劇場にレンタル申込書を提出します。それから数週間程度でレンタル契約書が送られてきます。
支払いスケジュール
一般的には、契約書にサインする段階でデポジットとして30%程度を支払います。支払いは小切手か銀行振り込みで行い、現金での支払いはありません。次に劇場入りする日に残額を支払います。精算しなくてはならない経費がある場合は、公演最終日に精算します。
劇場費以外の経費
劇場費に何が含まれているかは劇場によってまちまちですので、確認が必要です。劇場費が安くても、その他付帯設備や人件費が高い場合もあります。以下、劇場費以外の主な劇場経費です。
- 付帯設備費(照明・音響・舞台・映像機材など)
- 電気代
- チケット取り扱い費(劇場付属のチケットセンターを利用する場合)
- 技術人件費*3
- 劇場受付・場内案内人件費*4
- イベント保険*5
- その他のスペースの使用料*6
- ゴミ処理代*7
Webサイト上に劇場レンタルのページを持つ劇場をラインナップしました。ですので、自主事業が中心でレンタル可能期間が制限されているような劇場も含んでいます。
Theater Row (タイムズスクエア、6つ劇場があります)
Theatres & Venue Rentals | Theatre Row
Baruch Performng Arts Center (グラマシー、3つ劇場があります)
Rental Information - Baruch Performing Arts Center (BPAC)
Connelly Theater (イーストビレッジ)
Theater — Connelly Theater | Historic Theater in NYC's East Village
Producers Club(タイムズスクエア、5つの劇場があります)
Signature Theaters (タイムズスクエア、4つの劇場があります)
Rent Our Space at The Pershing Square Signature Center
Theater for the New City (イーストビレッジ、4つの劇場があります)
Theater Rentals – Theater for the New City
Teatro LATEA (ローアーイーストサイド)
The A.R.T./New York Theaters(ミッドタウン、2つの劇場があります)
59e59 (ミッドタウン、3つの劇場があります)
Vineyard Theater (グラマシー)
Facility Rentals | About | Vineyard Theatre
Theater 80 St Marks(イーストビレッジ)
Theatre Rentals – Theatre 80 St Marks
The Flea Theater (トライベッカ、3つの劇場があります)
Rent The Flea – The Flea Theater
Playwrights Horizons (タイムズスクエア、3つの劇場があります)
Space Rental : Playwrights Horizons
Atlantic Theater Company(
Rentals – Atlantic Theater Company
The Riverside Theater (モーニングサイド・ハイツ)
HB Studio Theater(ウェストビレッジ)
124 Bank Street Theater - HB Studio
The Sheen Center(グリニッジ・ビレッジ。2つの劇場があります)
Venues & Rentals – The Sheen Center
Symphony Space(アッパーウェストサイド、2つの劇場があります)
Rental Information | Affordable Rates | Symphony Space
Gobney Dance (ウォール街、コンテンポラリーダンス向け)
Gibney Dance | Classes, Shows & Studio Rental in New York
New York Live Arts Theater (チェルシー、コンテンポラリーダンス向け)
New York Live Arts Theater | New York Live Arts
Royal Family (タイムズスクエア)
Rent Our Performing Arts Space | Times Square | Royal Family
New Workd Stage (タイムズスクエア、5つの劇場がありオフ・ブロードウェイ向け)
THEATRICAL | | New World Stages
*1:これは、批評家がせっかく記事を書いても、読者が読んだときには公演は終了しているような短期間の公演を、ニューヨーク・タイムズなどが取り上げなくなってきていること、また日本と違い、アメリカでは、1本の作品を上演する際に、企画、準備から実際の公演まで3年程度の時間がかかることが多く、できるだけ上演回数を増やしたいとの思いがあるのではないかと思います。
*2:上演期間を決めない、主には経済的な理由により上演が難しくなるまで無期限で上演する、本当の意味でのロングラン公演のこと
*3:ユニオン劇場の場合は、不必要でも、持ち込みのテクニカルスタッフと同じ数のユニオン・スタッフを雇わなければならない劇場もあります。あるいは、劇場備品の設営は劇場手配のテクニカル・スタッフしかできない劇場もあります。逆に、仕込み初日に鍵だけ渡されて、あとは好きにやってと言われ、撤収時まで、誰も立ち会ってくれない劇場もあります。
*4:場内案内係やチケットもぎり、受付主任など、いわゆるFOH(Front Of House)周りのスタッフは、劇場が手配する人員を雇わなくてはならない劇場も多くあります。
*5:通常、来場者も含めた事故や設備の損壊に備えて、補償額1億円程度のイベント保険に加入し、その保険証書の提出を求められます。保険プランは公演日数やキャパシティにもよりますが、5万円から10万円程度で加入できます。
*6:楽屋などは劇場費に含まれますが、リハーサル・スペースや、ロビーなどを公演後のレセプションに使用する場合など、用途やスペースによって追加費用が発生することがあります。また飲食を伴ったレセプションを開催する場合、劇場出入りのケータリング会社の使用を求められることや、持ち込み代を請求されることもあります。
*7:劇場によっては、またサイズによっては、ゴミの廃棄代金を徴収される場合もあります