わんころけっとのアメリカに暮らしてみたものの

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LAは8月18日から完全リモート、NYは9月から通学とリモートのハイブリッドで学校再開

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学校に通わせてやりたいとの思いは一緒だが・・・。

子供は学校の教室で先生やクラスメートたちと一緒に勉強できることが一番だ、との認識に意義を唱える人は、あまりいません。しかし、そのタイミングや導入方法となると大きな意見の対立があります。「コロナに過剰に反応すべきではない」「子供はコロナにかかりにくいか、かかっても風邪程度の影響しかない」と考える人たちは早期再開に抵抗がないかもしれませんが、むしろ早期再開は、トランプ政権の次期大統領選にむけた経済政策が大きく影響しており、トランプ支持者の間で支持されているように思われます。大統領選を前に経済を立て直しておきたいトランプ政権は経済の早期再開を強行に各州に求めていますが、その大きな障害の1つとなるのがリモート学習にあります。アメリカの多くの州では子供を一人にすることは違法です。つまりリモート学習が継続される限り、両親のどちらかが自宅にいるか、ベビーシッターを雇う必要があります。これが労働者を職場に戻し経済再開を推し進めたいトランプ政権の意向と衝突します。

米国教育長官は完全な形での学校再開を地域に関係なく強行に求めている

政府の教育長官は、コロナの感染状況に関わらず、生徒全員が週5日学校に通う完全な形での学校再開を全州にもとめています。これに違反した場合は、連邦政府からの教育補助金を削除する可能性があるとの脅しともとれる内容も言及しています。先日CNNで放映された教育長官とのインタビュー映像が大きな波紋を起こしています。このインタビューを見ると政府の方針は、コロナ禍の状況如何に関わらず、またその結果も厭わない、との姿勢が見受けられます。(放送内容のざっくり日本語訳はこちらを参照*1


Betsy DeVos Couldn’t Justify Reopening Schools | NowThis

マスク問題同様、教育問題もアメリカの分断を助長している

2大政党制のアメリカは、以前から人種や思想信条、歴史や地政学的背景などにより、いくつかのグループに分かれていましたが、経済格差の広がりとともに考えや立場の相違は徐々に分断へと発展し、トランプ政権以降はさらなる混乱へと突き進んでいるように思えます。コロナ禍におけるマスク着用問題もその1つですが、学校再開をめぐる議論もその可能性を含んでいます。

感染症専門家の意見は比較的一致している

感染症専門家の意見は大筋「学校が再開できるかどうかの判断は、その地域ごとの感染率や感染者数の推移による」「感染が拡大傾向にある地域で学校を再開することは、火に油を注ぐようなもの」との見解です。全米で最大の学校区を有するロサンゼルス市とニューヨーク市で、学校再開の方法がお大きく違っているのもこのためだ、とABCニュースも伝えています。*2

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学校再開の方法は地域による

8月18日から新学期を迎えるロサンゼルスでは、完全リモート学習での再開を決定しています。公立学校に通う生徒数が110万人にのぼるニューヨークでは、通学とリモートの混合授業を計画しています。まだ計画段階ですが、NY市の場合、1クラスの平均的な人数は26名で、生徒は2つか3つのグループに別れ、2週間か3週間ごとに学校に通い、残りはリモートになります。完全リモートを選ぶこともできますが、7割り程度の保護者が、安全対策がきちんと取られる限り、学校に通わせたいと考えているとの統計もあるようです。部分的であれ学校再開となると、毎朝の検温と健康チェック、教室や設備の除染、ソーシャル・ディスタンスを確保するための配置、体調不良を申し出る生徒が出た場合の隔離部屋の確保、空気を循環させるための空調設備など、様々な準備が必要になりますが、具体的な内容や作業はまだこれからのようです。

我が子の通う学校でもリモートと通学の併用案に。

先日、子供の通う学校でもPTA集会がありましたが、通学とリモートの併用か、完全リモートのいずれかを選択できるとの基本方針はあるものの、具体的な実施方法や、予測される問題への対応などは、まだこれからの課題といったところでした。コロナが現在のインフルエンザなみの危険度になるまでには、まだ2年ほどかかるかもしれません。その間、ずっとリモート学習という訳にはいかず、ある程度の危険も理解しながら、先に進めて行くしかないのでしょう。学校に通う子を持つ親としては、学校に通わせてやりたいとの思いは同じです。今後のコロナ感染率の推移を見守りながら、政府や州市の発表を見守りたいと思います。

 

*1:

CNN「子供が学校に戻れるのが1番だが、その目標を安全に達成するにはどうすればいいか?」

教育長官「子供は、他のどの世代と比べてもコロナに感染しにくく、子供を学校に戻すことが危険であると示すデータはない。むしろ子供のメンタルヘルスを考えると学校に戻すべき」

CNN「ミズーリ州のキャンプでは82人の子供とスタッフがコロナに感染し、テキサス州の児童施設では1300人以上のスタッフと児童が感染していることからもわかるように、子供も感染を拡大させることが分かっている。CDC(アメリカ疾病対策予防センター)のガイドラインでも同様の報告がある」

教育長槓「CDCは同時に学校閉鎖をコロナ対策の最重要方針とはしていない」

CNN「あなたは教育長官として、(学校再開の結果)なにが起ころうとも学校を再開するように説得しているように見える」

教育長槓「いいえ、私が言っているのは、子供は学校に戻るべきで、各学校区はそうできるように計画するべき」

CNN「CDCは、子どもたちの間に防御壁を作る、遊具の使用を禁止する、1.8mのソーシャル・ディスタンスを取らせる、教科書をシェアさせない、などを推奨しています。教育長官は、全米の学校はCDCの推奨に従うべきだと思いますか?」

教育長槓「子供は学校に、教室に戻らないといけない。全米のすべての州、すべての学校区は、できない理由を述べるのではなく、できる方法を探して実行しなければならない、すべての学校が同じ方法を取らねばならない。」

CNN「教育長から学校区の責任者に選出された責任者に話を聞いた。彼の学区では、”通常、生徒間の距離は1.8mではなく45cmだ。現在、この学区では国防総省の5倍の面積を有しているが、これを1.8mにするには、さらに国防総省の5倍の面積の施設が必要だ。(なので)週2日学校に通い、残りの日はリモート教育を受けるか、1週間すべてリモート教育を受けるかの選択肢を保護者に与える計画だ”と言っている。つまり、生徒全員を学校に戻し、同時に政府の機関であるCDCののガイドラインを満たすことは不可能だと、彼は言っている。教育長官、あなたは不可能な要求をしている」

教育長官「週2日案や完全リモートは選択肢にない。子供は100%学校で授業をうけなくてはならない」

CNN「どんな学校でなら実行可能かなどのアイデアはありますか?」

教育長官「学校は生徒や家族のために正しいことをしなくてはならない。その実現歩法は学校によって違う」

CNN「教育長官は、各学校区それぞれで対処方法は考えろと言うが、全員を学校に戻して再開させるとの結論は学区に関係なく求めている、両立は無理では」

CNN「コロナ禍の学校区から予算を削減することは、何の助けにもならないと思うが」

教育長官「予算を削減したいとは思っていない」

CNN「予算を削減するとの脅しは今後はなし?」

教育長官「学校区が指示に従わず教育機会を設けない場合は、保護者は言うことを聞かせる方法を取るべきと考えるかも」

CNN「”はい”か”いいえ”で答えてください。今後も教育予算削減の脅しはある、ない?」

教育長官「私達は子供の教育機会を守らねばならない」

CNN「(笑)」

*2:

abcnews.go.com