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大阪のシニア劇団「すずしろ」の挑戦!コロナで中止となったNY公演に変わりネット配信で公演実施!

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皆さんはご存知でしょうか、実は日本は演劇大国であるということを。世界中でこんなに劇団と呼ばれる演劇グループが多数存在する国はありません。そんな中でも日本独特の発展を遂げているジャンルがあります。2.5次元ミュージカル・・・ではなくて、シニア演劇です。

シニア劇団が登場し始めたのは2000年代はじめの頃だと思います。中でも彩の国さいたま芸術劇場で芸術監督を努めていた故・蜷川幸雄氏が2006年に創設した「さいたまゴールド・シアター」は有名です。同劇団は55歳以上の劇団員からなり、蜷川氏が亡くなった後も活動を継続しています。蜷川氏は「年齢を重ねた人々が、その個人史をベースに、身体表現という方法によって新しい自分に出会う場を提供する」としています。

 

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かつては日本に100劇団もあると言われたシニア劇団ですが、現在でも30〜50劇団ぐらいは活動を続けているのではないかと思います。その多くはシニア以外の人たちの発起によって誕生していますが、今回紹介する大阪府箕面市を本拠地とする劇団「すずしろ」は、始まりこそ行政による生涯教育事業の一環としていますが、劇団発足とその後の活動に関しては、地元のシニアたちが自主的に運営を担っています。シニア劇団の内情を研究している訳ではありませんので、定かではありませんが、こんなにシニア自身が主体となって劇団を運営しているグループはないのではないかと思います。以下、劇団すずしろのウェブからの引用です。

劇団すずしろは、2004年に箕面市中央生涯学習センターの市民企画講座「60歳からの演劇入門」修了生が立ち上げた自主グループで、劇団誕生から16年目の活動に入っています。外からみると変わらずに活発に演劇活動を続けているようにみえるますが、創立メンバーで残っているのはただ一人だそうです。60歳以上が入団条件ですが、現実の高齢化社会の縮図がそのままあるということです。5年ほどたつと取り巻く環境は健康問題や家庭環境で継続できなくなってしまうのが現実です。劇団名の由来は「春の七草のすずしろ」立ち上げメンバーで話し合い20個以上の劇団名候補の中から「自分たちは大根役者である」という意味が込められて名付けられたそうです。

劇団すずしろでは、2010年6月に、なんと、ニューヨーク・ブロードウェイ公演を実施しています。沢山の困難を乗り越えて成功したNY公演の体験は、その後の大きな財産となり、「すずしろ活動」の礎にもなっているそうです。

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公演は大成功で、”アマチュアのシニア劇団の公演”というと、どうしてもクオリティが低く見られがちですが、観客を感動させるのは技術だけの問題ではない、という当たり前のことを実感させてくれる舞台だったそうです。NYの日系ローカル紙「週間NY生活」に、NY在住の演出家による以下のようなコメント掲載されていましたが、そこからも素晴らしい公演であったことが伺えます。

”「演劇の神様が喜んでいる」と思うほどの素晴らしい演劇体験をした。劇場という「場」を演じる側と、見る側として共有した驚きの70分だった。英語のセリフは耳に心地良く余りに自然で、それ以外考えられないほど違和感がない。演技の目的が、観客に伝える、そして演じている役柄に共感を覚えさせることだとしたら、満点だったと思う。どうしてこんなことができたのか、それは、彼らの中に「演劇をする行為」と「自分個人」の関わりが明確にあったからだろう・・・”

だそうです。

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ニューヨーク公演から10年後の2020年、劇団すずしろでは10年ぶりとなる2回めのニューヨーク公演を計画していました。しかし、コロナの影響を鑑み、やむなく中止としたそうです。しかし、ここでへこたれないのが昭和シニアのバイタリティー!リベンジを誓った(かどうか定かではありませんが)劇団すずしろでは、新たなる挑戦として、ニューヨークで上演予定だったオリジナル作品『Hagoromo』を無観客のネット配信で実施しました。以下添付から公演をご覧いただくことができますので、是非、ご堪能ください。

しかし、日本の高度経済成長を支えたシニア世代の活力はすごいですね。自分が70歳とかになって、こんなに精力的に、かつ自主的に、困難にチャレンジしながら活動を行うことができるだろうか??考えてしまいました・・・とさ。

シニア劇団「すずしろ」無観客公演 『葉ごろも』 NYバージョン

www.youtube.com

劇団すずしろ 公式ウェブサイト

suzushiro-minoh.com

 

 

 写真©劇団すずしろ