わんころけっとのアメリカに暮らしてみたものの

海外で暮らし、劇場で働き、社会で学び、子育てして、ゴルフする

アジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)とニューヨーク・フェローシップ

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海外で知見を広めることの意義

海外で専門分野の見識やコネクションを拡げたり、将来の活動について考える機会を設けたり、外から自分の活動や所属する社会の環境を考察したりすることは、非常に有意義なことだと思います。私自身、海外に出て最も良かったと思えることは、価値観は多様だと思えるようになったことです。極端な例かもしれませんが、日本で暮らしていると「電車は時間通りに来るもの」「時間に正確なほど良い」「電車が3分遅れたら謝罪するのは当然だ」というような考えが普通のことのように感じますが、海外で暮らすようになって、違う考え方もあるし、違う考え方にもそれなりの理由がある、と思えるようになりました。舞台芸術が社会からサポートされるべき理由の1つもそこにある・・・と考えますが、その話はまた別の機会に。

もちろん、インターネットを通じて、日本にいても海外の人たちの考えや社会制度、芸術団体の活動などは知ることはできますが、自分が普段所属していない外の環境に自らを置くことで得られる感覚や理解というものもあると思います。ただ、あてもなくフラッと海外に行っただけでは、現地で活動する人や団体と実際に会って意見交換をしたりするのは難しく、また、ある程度の時間をその社会で過ごしてみないと見えてこないことも多々あります。しかし、それらを個人で実行するのは経済的にも手配面でもかなり困難です。そういう個人の活動をサポートしてくれる誰かが必要です。そんなサポートを提供してくれる団体が世の中にはいくつかあります。その1つがアジアン・アーツ・カウンシル(ACC)です。

ACCについて

ACCは、ビジュアル・アート及び、パフォーミング・アーツに携わる個人や団体への助成を通じて、アジア諸国アメリカの芸術文化交流を促進する目的で、1963年にジョン・D・ロックフェラー三世により設立されました。以下、ACCのウェブサイトに掲載されているロックフェラー三世の言葉ですが、

「従来、米国人は文化的側面にほとんど注意を払わず、主に政治的および経済的観点からのみ国際関係を見てきました。その結果、私たちの世界観は他の文化への感受性によって拡大されるのではなく、私たちだけの文化に縛られる傾向がありました」

「他の文化の知識を高めることは、それ自体価値のある目的であり、またさらなる目的への手段として、他の文化の知識や尊敬を通じて、我々は人々を尊重し感謝できるようになる。」

彼はアメリカ人として語っていますが、自分に置き換えてみても同じことが言えると思います。しかし、なんと言ってもACCの素晴らしいところは、そのサポート・プログラム実行面です。これもACCのサイトの掲載されている言葉ですが、ACCでは「各グランティのニーズに基づいて個別にデザインされたプログラムを重視した独自の助成ブログラムを確立しました」とありますが、まさにそうで、そのカスタム・サポートぶりは素晴らしいです。

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ニューヨーク・フェローシップ(ニューヨークへの渡航滞在)

ニューヨーク・フェローシップは、ACCの事業の1つで、文字通り、ニューヨークの滞在と現地での活動をサポートしています。以下、概要です。

  • 期間:6ヶ月
  • 渡航開始時期:毎年7月もしくは1月から選択
  • 対象者:アーティスト、研究者、アートの専門家が対象
  • 対象分野:演劇、ダンス、建築、美術、文学、芸術経営など(詳細はACCウェブを参照)
  • 対象地域:中国、香港、日本、マカオ、フィリピン、台湾
  • 支援サービス:住居、米国J-1ビザ、健康保険、プログラムに関するアドバイス

「お金だけくれて、あとは自分で」という助成もあるなか、上記支援は本当に申請者のためを思った支援と言えます。海外に6ヶ月滞在するけど住むところは自分で見つけろ、と言われても予算もあるし、外国人だし、1年以上いる訳でもないし、かなり大変です。またビザも自分でと言われても難しく、結局、業者を使うはめになり、その費用は自己負担、なんて助成もあります。どことは言いませんが・・・。保険も医療費の高いアメリカでは必須だし、そして、なにより、現地での活動についてアドバイスを貰えるというのは、本当に助かると思います。話を聞きたいと思う団体や人がいても、門前払いされずに、どうやってたどり着けばいいのか分からない、ということは多々あります。

もちろん、誰でも貰える訳ではありませんし、審査もあります。ただ個人的な感想ですが、世間的な評判よりは、実際の活動内容、その専門分野への専心ぶり、そして業界内での評価などのほうが重要視されるのではないかと思います。誰かに認められることを目標にするのは本末転倒かもしれませんが、自分の活動や専心ぶりを客観的に検証し、ステップを積み上げていくという考え方を持つのは悪いことではないと思います。


アジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)紹介ビデオ スポット

情報引用元:アジアン・カルチュラル・カウンシル公式サイト

www.asianculturalcouncil.org