わんころけっとのアメリカに暮らしてみたものの

海外で暮らし、劇場で働き、社会で学び、子育てして、ゴルフする

俳優もプロゴルファーも大学で学ぶアメリカ、アファーマティブ・アクションがゴルフ界を支援する

f:id:azuki-ice:20200818124156p:plain

アメリカでは演劇は大学で学ぶもの

意外に思われるかもしれませんが、アメリカでは俳優のみならず、劇場で働く技術スタッフや制作スタッフ、美術や照明のデザイナーも、ほぼほぼ大学か大学院を卒業しています。

メグ・ライアンアンジェリーナ・ジョリーレディー・ガガ、そしてアン・ハサウェイを輩出したニューヨーク大学は、2人以外に映画監督も含め30人以上のアカデミー賞受賞者が卒業しています。

オーケストラで活躍する音楽家のほとんどが音楽大学を卒業し、美術家の多くが美大を卒業していることを思えば、同じくアートの実演者である俳優やデザイナーが大学で学んでいても、本当は不思議ではないのですが、日本では、そもそも演技や演出、舞台美術や技術を学べる大学が少ないこともありますが、それ以上に演劇をアカデミズムの1つとして大学で学ぶとの認識が一般的でないこもと大きいのかもしれません。日本における、そうした風潮は、演劇や映画を作る側、そして見る側にも少なからず影響を与えているのではないかと思います。

プロスポーツも大学出身者が多いアメリ

そしてアメリカではプロスポーツで活躍する選手たちも大学出身者が大勢を占めています。この状況はゴルフ界でも同じで元ロッテの投手にして、現在、江戸川大学教授を務める小林至氏のコラムによると、「現在の世界ランキング上位20人のうち、アメリカの大学ゴルフ部の出身者でないのは、ローリー・マキロイ(北アイルランド)とジャスティン・ローズ(イングランド)の2人だけ。1位のブルックス・ケプカやタイガー・ウッズアメリカ人選手はもちろんのこと、ジョン・ラーム(スペイン)、フランチェスコ・モナリ(イタリア)、アダム・スコット(オーストラリア)も、アメリアの大学ゴルフ部の出身者である」とのこと。*1

日本でも日本大学ゴルフ部が有名ですが、最近はプロゴルファーの若年化が進み、ジュニアから高校ゴルフ部、そしてプロとの流れが多くなってきているような気がします。

さて、小林氏の記事で特に面白かったのが「教育における性差別の禁止を規定した法案〜教育改正法第9編(TitleⅨータイトル・ナイン)〜がアメリカの女子ゴルフにも影響を与えた」との記事。*2

日本でもそうですが、大学や高校にとってスポーツは経営上、マーケティング上の重要なツールであって、優秀な学生を集めて強いチームを作り全国区で活躍することは非常に重要です。米国大学スポーツの市場規模は1兆円とも言われており、日本のプロ野球(約2000億円)やJリーグ(約1000億円)と比べても、その規模の大きさが分かります。ですので各大学は奨学金制度を活用して有望選手、特に人気スポーツで活躍する選手を集めることに躍起になります。

プロスポーツの世界では、どうしても男子スポーツのほうが市場規模が大きいので、当然、この奨学金の恩恵を受けるのも男子学生が多くなります。そこに登場したのが、教育における性差別を禁止したTitleIXです。

小林氏によると、「TitleⅨが法制化された1972年当時、奨学金を受ける男子学生は17万人であったのに対して、女子は3万人だったそうですが、2018年には男子28万人、女子22万人となり、奨学金を受ける人数も、男女比も劇的に変化した」そうです。

これは男子学生の場合は、アメフトや野球、バスケ、ホッケーなど人気種目で多数の学生に奨学金を出したいという大学の意向があり、同時に男子学生と女子学生の数を揃えないといけないとの規則から、女子学生で奨学金を貰える学生数が増えたと考えられます。また女子にはアメフトがない分、その人数を他の球技に振り分けねばならず、恩恵が女子ゴルフ部にも及んでいるそうです。アメリカでもプロゴルファーの若年化は進んでいるそうですが、アメリカのプロゴルファーに今も大学出身者が多いのは、社会的な背景だけでなく、そうした制度的な要因も大きいようです。

制度(アファーマティブ・アクション)による差別の是正

アメリカでは、マイノリティが過去に受けてきた不利益や差別を解消するために、大学の進学などで優遇する「アファーマティブ・・アクション」が有名ですが、TitleIXもアファーマティブ・アクションの1つと言えます。

最近の事例では、アメリカの女子サッカー代表が、「男子代表よりも報酬が少ないのは差別だ」として、アメリカサッカー連盟を訴えた裁判で、連盟理事長が「男子の方が女子よりも責任が重く、求められるスキルも高い」と主張し、結局、謝罪し辞任に至った出来事が有名ですが、現状の市場規模や動員力だけで言えば男子代表により多くの資金やスポンサーが集まるのは仕方ないことですが、ナショナルチームにおいて、これを「仕方ない」と放置することは、性差別を温存することに繋がります。

日本では、男女雇用機会均等法アファーマティブ・アクションと言えます。同法は正式には「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」と言いますが、採用、配置、昇進、福利厚生、定年、退職、解雇において性別を理由にした性差別を禁止しています。また、近年、セクハラやマタニティー・ハラスメントに対する禁止規定が制定され、2020年からはパワハラ防止措置も義務付けられています。同法は、もちろん女性の社会進出や経済的自立、自己実現など、女性の権利保護と差別の防止を目的としていますが、同時に仕事と家庭の両立、ひいては男女の役割分担を見直すことで男性も含めたワークライフバランスの改善を目的としています。

アファーマティブ・アクションによる大学の入学優遇措置では「点数で上回る白人学生が不合格になるのはおかしい」との不満が聞かれたりもしますが、社会トータルで見た時に、人種や性差による差別が是正されることは、より大きなメリットをもたらすと思います。

*1:引用記事:

news.golfdigest.co.jp

*2:引用記事:

news.golfdigest.co.jp